pochitto’s blog

詩、雑感などを記しています。

夢の君

 

夢の中で
君と出会った

君は人混みのなかから僕を見つけ
ねえ暇?
と僕に話しかけた
僕は一瞬驚いたけれど
君の悪気のない微笑みに
心を許した

僕と君は
何気ない会話をしながら
二人手もつながず
並んで街を歩いた

ねえ
お腹空いた
君がそういうから
僕はクレープを買いに
近くの店へ

その間に
君がどこかへ行ってしまいはしないかと
心配になり ふと君をみる
寂しげに遠くを見つめている
青く寂しげな眼差し

そんな僕に気づき
微笑みをくれる
暖かく優しい眼差し

僕はそのとき
君に見放されなかった事を
心から感謝した

ずっと見放され続けてきた僕だから
それだけのことが
うれしく思えた

君にクレープを渡す
おいしい、と君が言う
よかった、と僕が言う
たったそれだけの関係

ねえこれからどうする
と君が訊く
どうしよう
僕が呟く

どこかで休んでいく?
君が僕の顔を覗き込む
僕をからかっているのか
それとも本気なのか

それから君は僕の前に立ち
楽しかった
それじゃあね
と言った

僕も楽しかったよ
それじゃあね
本当はもっとそばにいたかったのに
嘘をついて見栄を張った

君は一瞬寂しそうな眼をして
それから街中へ溶け込んでいった

僕は君の行方を目で追いながら
それでも立ちすくんでいた

たったそれだけの
夢の中の出来事

君が誰だったのか
決して分かりはしないけれど

僕は君に
また会いたいと思う

君が望むなら
君が夢に現れるなら


そしてまた僕は
今夜も夢を見る

そして君を探すだろう
もう戻らない君を
青く寂しげな眼差しを
暖かい眼差しを
ずっと