pochitto’s blog

詩、雑感などを記しています。

兄について、自由と引きかえに失うものについて

俺にはひとつ違いの兄がいる。独身、一人暮らしのフリーター。
兄はいくつかの会社に勤めた後、フリーターとなった。今はフリーターをしながら、あちこちを放浪している。
フリーターとなった兄は自由を手に入れたが、その代わり失うものは多かった。社会的地位は言うに及ばず、日々の暮らしを担保するものを兄は失った。
それは兄本人のみならず、その家族である俺も本来得るはずのものを失うことになった。

本来フリーターになるべきは俺のはずだった。
兄は元来頭が良く、容姿にも恵まれ、音楽の才能があり、地元ではちょっとした有名人だった。その後本格的に商業音楽を志そうと音楽関連の専門学校へ通い、音楽関連の企業に就職した。その後は最初に書いた通りで、就職後の理想と現実に耐え切れず(他にも理由があるだろうが)、現在に至っている。
俺はというと、勉強も大してできず何の取り柄もない上に歪んだ性格、それゆえ友人にも恵まれず、孤独な青春時代を送った。かろうじてコンピュータだけがそこそこ扱えた為にコンピュータ関連の会社に就職、数年後に転職。結婚し一子を授かり、馬鹿なことに一軒家=銀行借家を購入し、現在に至る。
どこでどう道筋を間違えたのか、未だに分からない。今兄がゆく道は俺が通る道だったのであり、それの思いは年々強くなるばかりだ。俺は根無草の如き人生を、自由という名の孤独を一人生きるつもりだった。結婚なぞ有り得ない話で、ワイシャツとネクタイはとっくの昔に捨てているはずだった。
それがいつからか、俺と兄の役割がすっかり逆転してしまい、俺はそれに困惑している。
今からでも遅くない、俺と兄は本来の役割に戻るべきじゃないか、いつも考えている。俺に自由を返してくれ、とも思う。かといって俺と兄の役割をあるべき姿に戻そうとすると、今度は俺のみならず俺の家族にも大きな影響を及ぼしてしまう。俺が自由になろうとすると、俺の家族と兄がたくさんの物を失うことになる。俺自身も後ろ盾、のようなもの、を失ってしまう。
兄と俺の人生。そして自由と引きかえに失うもの。何度も何度も考えては、結論が出ぬまま今日に至っている。この先いくら考えても結論は出ないのだろうけど、書かずにはいられなかった。